内視鏡でわかる大腸の病気

大腸の病気

急性の大腸の病気は、腹痛、下血、腸閉塞、通異常などはっきりした強い症状があります。入院治療が原則になります。
症状が弱い、あるいは無症状だが病気が疑われるときは診断のために大腸を直接観察することで速やかに診断治療に進むことができます。

一方最大の関心事である大腸がん、大腸がんリスクのあるポリープの診断では症状をあてにはできません。特に初めての方は、自分では何も症状がないのにどうして検査するのか?と考えます。
私の持論ですが50歳で一度大腸の中を見ておくと自分の大腸がんリスクを自覚できます。
攻撃は最大の防御です。

1. 大腸ポリープ

当院 約4000例
粘膜の部分的な盛り上がりをポリープといいます。
大きく2つに分類されます。過形成性ポリープと腺腫です。過形成性ポリープは癌になりませんが腺腫はリスクがあります。腺腫をいかに見落とさないかが大腸検査には重要です。
クリニックで切除できるポリープは直径10mmまでです。これより大きいものは癌化の可能性を持っています。
当院で内視鏡検査でポリープは約9割の方に見つかりその半数が腺腫でした。腺腫ができるのは体質のようなもので定期的に掃除をしていく必要があります。
生活習慣とか食事などでポリープ発生を予防はできません。兄弟はその体質は似ているので誰かにポリープが見つかった場合は自分にもあると考えて検査を受けるべきです。

2. 大腸癌

当院 70例
大腸癌は無症状の時間がとても長いのです。
多くの場合、癌が始まってから命にかかわるステージになるのに約10年かかります。
症状がでるのは最後の3年です。症状で待ってはいけません。便潜血は最低限やるべきです。
陽性だった場合は必ず内視鏡検査を受けてください。血縁に大腸がんがある方はリスクがあります。特に兄弟は危険です。
消化器外科で大腸がんの手術説明の際にはほとんどの医師は、患者さんに兄弟がいる場合はすぐに検査をするように勧めます。
大腸がん治療後の方はポリープが出来やすいので定期的な内視鏡検査が必須です。

3. 大腸憩室

当院 1065例
粘膜にできるポケット状の窪みを憩室といいます。
なぜ出来るかを説明します。
消化管は大きく二つの層があります。外側の筋肉層、内側の粘膜層です。筋肉層は硬さがあり柔らかい粘膜を守っています。
一方、粘膜には多くの血管が分布して吸収した栄養や水分を肝臓に運びます。筋肉層にはこの血管が通る穴が無数に開いています。
通常は1mm以下の穴ですが時に10mm以上になることがあります。すると粘膜は柔らかいので腸の中の圧力に押されてドーム状に飛び出ます。腸の内側から見れば粘膜のポケットです。
このポケットにたまった便はその水分を常に粘膜に吸い取られるので石のように硬くなります。これが粘膜を傷をつけることが稀に起こります。
その結果、炎症や出血が起こります。炎症は急性腹膜炎となり強い痛みが出ます。出血には痛みはありませんがかなり大量にでることがあります。
両者とも入院治療が必要です。無症状の憩室はしばしば遭遇します。
当院でも5人に1人くらいあります。
症状を起こすことはめったにありませんが持っていることは知っていれば腹痛で救急受診したときにとても重要な情報になります。特に虫垂炎と誤診されて手術になってしまうことは避けたいです。
殆どの憩室炎は手術にはなりません。

4. 大腸炎

当院 潰瘍性大腸炎38例 クローン病 ゼロ
急性の大腸炎には細菌やウイルス感染による炎症。
大腸の血流障害によるもの、経口抗生剤の副作用によるものなどがあります。
慢性の腸炎は潰瘍性大腸炎、クローン病などがあります。
最近治療法が格段に進歩しました。潰瘍性大腸炎は当院では38例診断がついていますが5例のぞいて軽症です。

5. 虚血性大腸炎

突然の左上腹部の強い痛みと下血が見られます。かなり重症感があります。
原因は腸粘膜の血流障害です。心臓で起きれば心筋梗塞です。
大腸の左上は大腸の中で特に血管が細いためにこのようなことが起きます。しかし腸の血管網は交互に交通があり閉塞事故が起きてもやがて別のルートができます。つまり安静にしていれば自己修復して現状回復します。
きっかけは特にないことが多いですが夏の運動と脱水は危険です。

6. 大腸粘膜下腫瘍

当院 9例
正常な粘膜を被った隆起病変です。いろいろな原因病変があります。
盲腸に多発します。危険性は低く経過観察の方がほとんどです。

7. 大腸黒皮症

慢性便秘でセンナを含む下剤の連用している方にみられます。
粘膜に色素沈着が起こり少し黒くなります。疾患ではありません。
正常な粘膜だけが黒くなります。大腸腺腫とか大腸癌など異常細胞は黒く染まらないので白く目立ちます。
我々検査医にとっては検査時にこれらを見つけやすくなるというメリット?もあります。センナをやめると戻ります。

8. 大腸子宮内膜症

かなり稀な疾患です。子宮内膜症が大腸壁に起きて発症します。S字結腸に多いです。
狭窄が進んで便通異常、腹痛がでます。生理痛と便通異常あるいは血便が重なる場合には可能性があります。
日赤時代に2例経験しました。