ピロリ菌

どうしてピロリ菌は恐いのか

胃癌を引き起こす可能性が高いからです。胃癌は萎縮性胃炎という変化を母地にして発生します。
この胃炎は今まで、老化現象とされてきましたがピロリ菌との関連性が高いことが分かってきました。
つまり胃の前癌状態を作るのがピロリ菌ではないかと考えられるようになったのです。
さらにMALTリンパ腫という肉腫がピロリ菌と関係があることが分かっています。

癌のほかにどんな悪いことをするか

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因となるほか潰瘍の再発率を高めます。
これはピロリ菌が潰瘍修復の組織を不良なものにしてしまうためで、軽いストレスでも潰瘍を作りやすい状態になるのです。
そのほか胃に良性のポリープを作ることがあります。

どんな細菌なのか。年齢と保有率。水洗トイレ

強い酸性の環境にある胃に細菌が生存、 繁殖することはあり得ないと信じられていました。
1982年オーストラリアで初めてピロリ菌が同定され発見者自ら培養液を飲んで急性胃炎が発生することを発表しました。
実に巧妙な仕組みで酸の攻撃をかわしています。この菌はウレアーゼという酵素を分泌してアンモニアを作ります。アンモニアはアルカリ性です。これで酸を中和しながら胃粘膜に棲み続けます。
日本人のピロリ菌保有率は年齢で大きく異なります。
60歳以上で8割であるのに比べ30歳以下では約2割に激減しています。
さらに10代では1-2%です。これは衛生環境の改善、主として水洗トイレの普及が進んだためと考えられています。

退治法は。再感染しないのか

抗生物質を1週間連続的に服用して除菌します。
一度除菌が成功すれば再感染はありません。
最新の除菌薬は除菌成功率95%です。5%の人が耐性ピロリ菌を持っています。
現在この菌の除菌法は確立していません。経過を見守っていくことで対応しています。

自分がピロリ陽性だったら家族も検査したほうが良いか

今の生活環境から考えて必要はありません。胃の症状があるときは検査すべきです。

若返る胃。除菌したら症状が悪くなる

除菌後の観察で萎縮性胃炎が改善していることがよく見られます。
慢性的な胃の症状が取れておなかがすっきりしたとか、便通が良くなった、あるいはしつこかった口臭が消えたといわれることもあります。
健康な胃粘膜が復活したためと考えられます。

いっぽう除菌後、胸焼けが悪化することが時々あります。
これは一見矛盾することなのですが、除菌で本来の胃に戻ったため、胃酸分泌が高まり症状が出ているのです。
この場合は酸のコントロールが必要です。
除菌しても引き続き薬の世話になる場合があるということです。
ピロリ菌の悪行の数々を避けられることを考えれば分の悪い取引ではないと思います。

除菌すると胃がんになりにくくなるか

これはとても大事なことですが、実に多くの方が、ピロリ除菌が成功したら「胃がんリスクはゼロになる」と誤解しています。これはマスコミのミスリードで責任重大なことです。ピロリ菌と関わりがあった人はリスクが続きます。そのために除菌後の内視鏡による経過観察がとても重要です。

最悪のシナリオは「私の胃にいたピロリ菌は退治できたのでもう胃がんにはならない」と信じて多少の症状は無視していたがいよいよはっきりしてきたので胃カメラ受けたら進行胃がんが見つかるということです

除菌後5年すると胃がん発生はかなり低下しますがリスクゼロにはなりません。